主体性を育てる方法

2025.05.16

2025.05.15

主体性を育てる

前回,「子どもの主体性とは?」についてお話しいたしました。今回は「子どもの主体性を育てる具体的な方法」についてお話しします。

このお話しをするときはいつも,数研出版の依頼で寄稿した「進路・興味・関心・適性に合わせた数学指導について」を思い出します。依頼を受けたとき勤務していた高校では,難関国公立大学に合格する生徒がいる一方,数学の単位習得を心配しなければならない生徒がいるクラスの数学を担当していました。進路や関心が異なる生徒が,一人でも多く興味を持って数学に取り組んでほしいという思いから,数年に渡り試行錯誤を繰り返していました。この実践報告をまとめて寄稿したのが,「進路・興味・関心・適性に合わせた数学指導について」でした。このクラスの数学指導は,教師生活の中で最も過酷な教科指導の一つでしたが,最も多くの数学指導理論とスキルを身につけることができた経験でもありました。

その中の一つが,「課題を選択する状況を生徒に提供する」ことでした。具体的には,一律の課題を出さずに,国公立大学進学希望者用の課題と,進学に数学の必要がなく数学に対しても苦手意識のない生徒用の課題と,数学が苦手で単位習得が心配な生徒用の課題の3つを準備しました。そして,生徒が進路・関心・興味・適性に応じて,自由に選択した課題を提出する,というものでした。どの課題にも内容のあるリポートが提出され,それらの中から興味深いものはプリントにして生徒とシェアーしました。生徒からの評価も課題の提出率も,圧倒的によかったことを覚えています。また,生徒が自由意思で一つを選ぶという行為は,生徒の主体的行動そのものです。自分の意思で選択した課題の取り組みの中に,生徒の主体性と意欲を感じました。

現在指導している小学生にもこの手法を活用していて,生徒が生き生きと授業に取り組む様子を目の当たりにしています。勿論,中学生・高校生の指導に対しても確かな手ごたえを感じています。

今日は,主体性を育てることについてのお話でした。