受験体験記④

2025.03.10

Kさん(中学3年生 ICU大学高等学校合格)のお母さまの受験体験記です。最後に、指導者守田先生の体験記もあります。

 燃え尽き症候群という言葉があるように私自身がかかるのではないかと思うほどに娘の受験を終え張り詰めた緊張と極限の不安感から解き放たれました。

帰国子女というバックグラウンドを持つ娘が学習面において後れをとっている心配があったので中高一貫校へ進学することにしましたが、順応することが難しく入学して間もなく学校生活に不満を漏らすようになりました。折衷案として今の中学を卒業し高校で転校することを提案し、中学1年次に高校受験を決めました。部活動においては精力的に活動し学業においても申し分ない成績を修め第一希望である高校を受験できるまでになり3年生を迎えました。

4月に外部受験する旨を学校に伝えると予想外の回答が伝えられました。校長推薦はできない。調査書に記載する評定は成績表よりも悪く書く。外部受験した場合、仮に受験が失敗しても当該高校への内部進学は不可。耳を疑う内容でしたが、中高一貫校に入学するということは6年間の在籍が当然ということが学校の方針とのことでした。娘の意思が尊重されず、理不尽な対応に親子して憤り涙しましたが学校の意向を変えることは難しく黙って受け入れるしかありませんでした。

            是が非でも転校したい娘。敢えてリスクをとる娘。

高校浪人だけは避けたい親。無難で安全な道を選んで欲しいと願う親。

親として娘にある程度の道筋を示す必要があるのではないかと考え、リスクを説明した上で踏みとどまるように説得を試みましたが、想像以上に意志は固く変えることはできませんでした。最終的に出した答えは「外部受験をする」でした。

当初の推薦入試受験は諦めざるを得ず、白紙になった計画を練り直すことになりました。何が親としてできることなのか?娘に出来ることは何なのか?何度も3人で話し合いました。娘は現状を維持すること。英語の資格試験に合格すること。親としては受験できる高校を全国区に広げて探すこと。公立中学校へ転校し推薦状を書いてもらい推薦入試を受けられるように準備すること。その他に考えられる幾通りもの受験パターンを洗い出し、その上で必要な手続きや情報収集など行動にうつし消化していくこと。そして最悪のシナリオまで考えることでした。

そうして迎えた12月。最初の受験に合格することができ、最悪のシナリオは回避でき皆で胸をなでおろしました。年明けに控えている受験へ最高のスタートを切ることができ、結果として希望していた学校へ合格することができました。

改めて受験を振り学んだことは

・子供の意見を聴き意思を尊重する

・親は応援団員である

・人事を尽くして天命を待つ

 黒澤先生が仰っていた「子供を真ん中に置いて考えることが大切」という言葉。真ん中に置くということは両端に支える人がいるということになり、それが家庭であり学校であり社会である。思いを聴いて受け入れてくれる場があれば、安心して過ごせる環境が整い、子供には自主性が生まれ、自立した大人へと成長するのではないか?と思います。この受験を通し娘は大きく自立しました。何をすべきなのか?いま何が重要なのか?を自ら考え行動できたことが結果に結びついたように感じます。

もし、彼女の思いを聴かずに親が意見を押し通していれば親子関係が崩れていたかもしれませんし、内部進学をしたとしても高校では登校拒否になっていたかもしれません。子供を真ん中に置いて考える。これが大切だと痛感しています。野球チームで例えるならば、親は監督でもコーチでもなく子供の応援団員であることが最適な距離ではないかと思います。今となっては指示・命令することもなく子供の自主性を育み自立した人へと成長し、自らの思いを信じ動ける力があると信じ切ることが親の役割のような気がしています。

また最低最悪の結果を受け入れる心の準備をすることで、腹を括ることができました。受け入れたくない事実を受け入れることで、ピンチをチャンスに切り替えるアイディアも浮かんだり、思わぬところに繋がったりもしました。最悪は、高校浪人。その一歩手前は、9月に広島のある高校を受験することでした。当初、候補に挙がっていない学校だったので情報量が少なく知り合いもいなかったので、どのように情報収集しようか困っていました。そこに、不思議な縁が生まれました。長女に大学進路相談してきた高校3年生が、その広島の学校の卒業生で学校の様子やIBプログラムについて色々と教えてくれることになったのです。こうしてリアルな声を聞くことができ、この学校も最悪の事態を回避するための一手となり、受験校の候補にすることになりました。もうこれ以上ないところまでのリスク管理をし、まさに人事を尽くして天命を待つという状態を作ったことで、心に少しだけ余裕が生まれました。

この受験を通して多くのことを学び得た豊かな時間でした。

「思いは叶う、ほんまにほんまやで!」の言葉通り、彼女の思いは叶いました。

黒澤先生、雪子先生には学習面はもちろんのこと、精神的にもきめ細やかなサポートいただき本当にお世話になりました。ありがとうございました。

守田雪子先生

Kさん、志望校合格おめでとうございます!

初めて奏さんに(画面越しに)お会いした時から、言葉は少ないけれども意志の強い方だと感じていました。国語のテスト対策から始まり、受験前は小論文の指導をさせてもらいました。

小論文を日本語で書き始めた時は、書きたいことをうまく書けないもどかしさが文章から溢れていました。技術は足りないものの、書きたいことが明確であり、文章にとって最も大切な「自分らしさ」「独自の視点」がすでに備わっていたことから、技術面をサポートするだけで必ず上手くなるという確信がありました。

受験のため英語でのエッセイの添削を始めたところ、日本語の文章とは対照的に「書きたいことを書ける自由さ」のようなものが明らかに感じられました。英語で文章を書く際のルールや論理性が、Kさんのこれまでの努力によって自然と身についているのだと思いました。日本語では文章を書くことに慣れていないため、思考と技術が分離していてぎこちない感触がありましたが、英語で考えたり読み書きをすることにおいて、普段からかなり高いレベルで訓練されているのではないかと感じました。自分自身の思考と技術が一体となっていて、意識せずとも自由に思ったことが書けていました。わたしが指導したのは、ほんの小手先のテクニック(構成、具体性、対比など)のみであり、文章に必要不可欠な独自の視点はすでに自身の努力によって手に入れておられ、毎回読ませてもらうのが楽しみでした。

この独自の視点は、そのまま生きる力であると、強く思います。世界をどのように捉えるか、それこそが個性であり、他者との違いに臆さないことこそが知性であるとするならば、Kさんにはすでに確固たるユニークネスと知性がありました。だからこそ今回の難局で自分の思いを貫き、自分を信じ、必要な努力を怠ることがなかったのだと思います。心の底から尊敬します。お会いできたこと、そして少しでもお役に立てたこと、とても嬉しかったです。ありがとうございました。ご活躍を期待しています。