2022.08.29
友人の上西園武良氏と話していて,興味ある内容がありましたので,皆様にご紹介いたします。上西園氏は元大学教授で,世界で論文を発表するだけでなく,大学入試問題作成も経験されています。
(上西園武良氏) 大学入試試験は、大学での学びについて行けるための学力が十分かを調べるための試験です。従って、合格すれば卒業までスムースに行けるはずですが、私の経験では学力が十分でも途中で脱落する学生もいます。
原因のひとつが、大学は高校の単なる延長ではなく別の能力を求めていることにあります。高校までの学習内容は文科省が定めており、ほぼ固定されています。これから逸脱することはなく、言い換えると「与えられたものをしっかりこなす。」に尽きます。一方、大学では高学年になるほど、「自分で問題を探し、あるかどうか分からない答えを自分なりに見つける。」ような学習が多くなります。これの典型が卒業研究です。
卒業研究はまず研究テーマ探しから始まります。ノーベル賞レベルのテーマは必要ありませんが、小さなテーマで良いが「オリジナリティ」、つまり「今までだれもやっていない」、は必要です。優等生タイプの学生はここでつまずき、自分でテーマを見つけられないことが多い。おそらく、問題(テーマ)は常に与えられるものと思っていて、自分で探すという経験が少ないためです。一方、学力はそこそこでも興味深いテーマを見つけてくる学生がいます。日頃、色々なことに興味をもって活動している、あるいは、自分が納得できないことがあるとその理由を探っている、というようなタイプです。一言で言うと「問題意識」の高い学生です。
テーマが決まれば研究に入るわけでが、簡単そうに見えたテーマでもしっかり調べていくと、難しい課題が出てきます。どんなテーマでも「峠」を越えなければ先に進めない、という局面に必ず出会います。ここでも学生の能力が問われます。学力や知識量が多ければ解決する場合もありますが、大抵は「逃げない」姿勢が問われることが多いです。学力や知識量に優れていても問題に正面から向き合おうとしない学生は中途半端な答えしか見つけられません。一方、正面から向き合い、粘って何とかしようという姿勢の学生は、ユニークな答えを見つけてきます。一言で言うと「問題解決能力」の高いタイプの学生です。
問題意識の高さと問題解決能力は卒業後の職場でも常に求められるものです。小学校から高校の教育においても、知識の獲得だけでなく、何らかの形でこれらの能力の育成が必要ではないかと思います。